北大開示文書研究会のシンポジウム・出前講座

アイヌの遺骨はコタンの土へ 歴史的な再埋葬を語る集い

ごあいさつ

清水裕二 コタンの会代表、北大開示文書研究会共同代表

清水裕二さん

 「歴史的な再埋葬を語る集い」を開催いたします。どうぞよろしくお願いします。

 ごあいさつの前にご報告します。きょう午前中、杵臼返還に引き続き、北見紋別の畠山敏さんと北大との間で和解が成立し、ご遺骨の返還が決まりましたことを最初に申し上げたいと思います。(拍手)

 さて、かつて浦河町杵臼墓地から掘り出された先祖のご遺骨がさる7月、北大から返還され、郷土の土に還ることになりました。これは、私たちが求める先住権の一部、1/10か、1/100かも知れませんが、それを獲得したんだ、というふうに私は理解しております。間違いなく先住権を勝ち取ったことは、心から喜ばしい事実であります。自らにおめでとうと言いたいと思いますし、みなさんにも共感してもらいたいと思います。(拍手)

 ありがとうございます。今までの経緯をじゃっかん、申し上げたいと思います。情報開示法に基づいて、小川隆吉さんが2008年1月、北海道大学にアイヌ人骨に関する情報開示を求めました。開示された文書の調査分析などを、北大開示文書研究会という会を設立して推進してきました。その後、私どもはまだ原告ではありませんけれども、小川隆吉さん、城野口ユリさん、私を含めて、北大開示文書研究会の人たちが、北大に面談を求めました。しかし、警備員と言うんでしょうか、ガードマンを配されて、面会を拒否されました。この事実については、後ほど詳しく話があるかと思います。拒否されたことに対し、城野口ユリさん、小川隆吉さんの悔しい思い、ですね。これがやがて提訴・裁判へとつながっていきました。裁判を継続してまいりましたが、原告である城野口ユリさん、小川隆吉さんが高齢である、超高齢であるということから、和解協議に流れていきました。そして今年2016年3月25日に、杵臼訴訟についての和解協議が成立しました。

 浦河町杵臼の墓地から持って行かれたお骨については、私どもの先祖のご遺骨、先祖の魂、12体をを返還してもらったわけですが、これを受け取るのに、私どもは「コタンの会」という団体を設立いたしました。

 どなたも同じ思いになっていただけると思うんですが、再埋葬などと言うことは本当に未知のことでありますね。私どもコタンの会としては、本当に雁首を突き合わせながら、喧々がくがくの議論を積み重ねながら、創造的、慎重、前進的というのを基本方針にして、3つのポイントを踏まえて取り組むことにしました。

 1つ、国や北大に対して、心ある言葉をちょうだいしたいということ。

 2つ、コタンの会は当事者として、返還される遺骨を心より受け取って、心からの恭しい、アイヌプリといいましょうか、慰霊をするということ。

 そして3つ、まさに歴史的に初めてのことですので、再埋葬という、私は大事業と表現したいぐらいですが、国内あるいは国外への情報発信をすべきであるということ。

 これら3つを私ども、基本方針として取り組みました。ほんとに、毎日のようにと言って良いと思いますけれども、近在のお年寄りを訪ねてご意見やらアドバイスをちょうだいしたり、近くの博物館を訪れまして、過去に行なわれたアイヌの葬送の記録を確認し合い、当日に至りました。まさに創造的・慎重・前進的な気持ちで、激論を重ねながら企画をしたんだよ、ということをまず報告したいなあと私は思っています。

 7月15日、北大のアイヌ納骨堂から遺骨が出発しまして、浦河町杵臼まで遠路来ました。それに対する、何て言うかな、ご苦労さんカムイノミを行ないました。2日目は省略して3日目ですね。7月17日になりますけど、まさに再埋葬することになりますので、朝からカムイノミをし、再埋葬しましたので、これでやっと安心してくださいというイチャルパをするという儀式を行なったのであります。

 今日の報告会に、当初から、先ほど申し上げたように、2008年1月に小川隆吉さんが開示請求した経緯を含めてですね、ご報告するわけですが、ご遺骨の返還を受けた、再埋葬した、ということを縷々説明させてもらうわけでありますが、じつはですね、非常にですね。私としては心が煮えくりかえるような思いがあったことを少しお話しします。

 私ども「コタンの会」がね、「どこかからお金をもらってるんじゃねえか?」ていう、とんでもないことが流されていた。それをまともに受けながら、耐えながら、ホントに頑張ってやったわけでして。「じゃあ、おめえたちどうやってやったんだ」ということになるので説明しますけど、全国のみなさんがたからのほんとに温かい心、大きいご支援、カンパをちょうだいして、実行したと言うことをご報告申し上げて、きょうご参会のみなさま、全国のみなさまに深く深く御礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。(拍手)

 最後になりますけれど、この再埋葬事業を終了した後、北海道のみならず、全国的な大きな反響が広まったというふうに申し上げたいと思います。返還するって、しごく当たり前のことですよね。と、私は思いますけど、この当たり前のことが、道内のみならず、当然だという世論が築かれつつあるということをご承知いただきたいと思います。さらに、きょうも新聞(記者が)、お越しでしたけれども、外国にもアイヌ人骨返還の話題が出ているということをご承知かと思います。このようにほうぼうにいろいろな広がりが出ているということを申し上げたいと思います。

 このような情勢になっておりますので、私たちの先人のご遺骨の地域への返還の動きを高めるということが、きょうの集会の大きな大きな目標であると思っております。そういう意味で、いろんなご意見をちょうだいしたいと、心から思います。

 間違っても、どっかの情報で流れているように、(大学にある遺骨を全部)どこだかに収容、集約しようということは、あってはならない。阻止したい、という思いが私にはあります。どこだかに集めましてね、観光資源にして、そして再度、調査研究の材料にしようと言われていますが、とんでもございません。私、怒っております。

 この後、それぞれのみなさんから詳細にご報告申し上げたいと思いますので、どうぞ最後まで耳を傾け、聞いていただければありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

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