北大開示文書研究会のシンポジウム・出前講座

アイヌの遺骨はコタンの土へ 歴史的な再埋葬を語る集い

2016年11月25日

アイヌの遺骨はコタンの土へ/歴史的な再埋葬を語る集い

終了しました。ご参加くださったみなさま、どうもありがとうございました。

集会の主旨

「コタンの会」は2016年7月15日~17日、北海道浦河町杵臼で「返還遺骨を迎えるカムイノミとイチャルパ」を開催し、北海道大学医学部によって持ち去られたままになっていたアイヌ遺骨12箱分を、八十数年ぶりに元の墓地に再埋葬しました。アイヌプリ(アイヌの流儀)による葬送儀式には内外から大勢の市民が参列し、慰霊とともに、遺骨たちがなぜ墓地から掘り出されなければならなかったのか、今なお大学に留め置かれたままの大勢の遺骨をどうすべきなのか、加害責任をどう償えばいいのか、それぞれ思索を深めました。経過をふり返りながら自由に意見を交わします。

「アイヌの遺骨はコタンの土へ 杵臼からのメッセージ」を満場の拍手で採択しました。

プログラム

ごあいさつ 清水裕二(コタンの会代表、北大開示文書研究会共同代表)
記録映画 「85年ぶりの帰還 12人の遺骨が杵臼コタンへ」コタンの会製作、18分
第1部 杵臼再埋葬を語る
  報告1 遺骨を迎えたコタンの末裔の思い
  小川隆吉(訴訟原告、コタンの会顧問)
  山崎良雄(原告・城野口ユリさんの実弟、コタンの会副代表)
  小川トシ子(小川隆吉さんの実姉、コタンの会)
  高月勉(コタンの会事務局長)
  報告2 コタンによる葬送の復活 葛野次雄(コタンの会副代表)/葛野大喜(札幌大学ウレシパクラブ)
  報告3 杵臼コタンが遺骨を取り戻すまで 平田剛士
  報告4 アイヌネノアンアイヌ:研究者である前に“人間”でありましょう 小田博志(北海道大学教授、人類学)
  報告5 遺骨返還の意義/先住権回復のスタート地点 市川守弘(北大開示文書研究会、弁護士)
第2部 パネルディスカッション 遺骨返還から先住権の回復へ
  コーディネータ:殿平善彦(北大開示文書研究会共同代表)
  パネリスト:差間正樹(訴訟原告、浦幌アイヌ協会会長)/清水裕二/市川守弘
  アイヌの遺骨はコタンの土へ 杵臼からのメッセージ
日時 2016年11月25日(金曜)18:00~21:00
会場 北海道クリスチャンセンター 札幌市北区北7条西6(電話 011-736-3388)
共催 コタンの会/北大開示文書研究会
協賛 北海道クリスチャンセンター/日本基督教団北海教区アイヌ民族情報センター/週刊金曜日
後援 少数民族懇談会/日本平和学会北海道・東北地区研究会/カトリック札幌地区正義と平和協議会/国民救援会北海道本部/苫小牧民報社/毎日新聞社/読売新聞社/北海道新聞社/朝日新聞社
入場料 500円(資料代として)

アイヌの遺骨はコタンの土へ 杵臼からのメッセージ

朗読 殿平善彦・北大開示文書研究会共同代表

pdf 音声

アイヌ遺骨返還訴訟の和解にもとづき、去る7月17日、北海道大学に長らく持ち去られていた12体の遺骨が、「コタンの会」の手によって、浦河町杵臼共同墓地に戻されました。地元のみならず、各地からの大勢の参列者がどれほど心安らいだことでしょう。杵臼コタンのシンリッ・エカシ・フチ(祖先の方々)も、同胞の80数年ぶりの帰郷をさぞ喜んでくださったと思います。「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(2007年採択、UNDRIP)に列挙された「集団としての権限」の一端を、原告や「コタンの会」は史上初めて取り返しました。

ところが北海道大学は、ほかの地域からの収集遺骨については、被害コタンからの請求がない限り、すべてを「象徴空間」に送る方針を変えません。他大学・博物館も同様のようです。

かつて大学研究者たちが収集したアイヌの遺骨は、「象徴空間」などに再集約するのではなく、それぞれ元のアイヌコタンの墓地にこそ返還すべきです。

かつて、一方的に発掘し、持ち去った過去の歴史を解明することなく、大学や研究者、政府の責任のありかを検証せず、謝罪もないまま、遺骨を一方的に集約し、再び研究対象とすることは、UNDRIPに反し、「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」(2008年国会決議)を空文化する、著しく人道から逸脱した暴挙と言わねばなりません。

以上をふまえ、私たちは次のメッセージを発信します。

(1)政府は、「象徴空間」への遺骨集約を中止し、収集遺骨を早急に元のコタンに返還する手立てを講じましょう。「杵臼」をモデルに各地アイヌ集団(コタン)への遺骨・副葬品完全返還のプログラムを確立しましょう。近代以後のアイヌ政策を反省し、アイヌに謝罪し、コタン復興を支援しましょう。

(2)アイヌ遺骨を収蔵する大学、研究機関、博物館などは、遺骨収蔵の経緯を検証し、その結果を公表し、自らの責任を認めて、アイヌへの加害を謝罪しましょう。コタンへの遺骨の返還に誠実に取り組みましょう。

(3)墓地発掘・遺骨持ち去りを受けた各地のアイヌ協会は、返還遺骨の受け入れとイチャルパ/シンヌラッパ(祖先の追悼)に向けた活動に取り組みましょう。また各自治体は地元の被害について調査・公表し、遺骨受け入れ活動を支援しましょう。

(4)市民は、アイヌに対する植民地支配・同化政策について学び合い、地元への遺骨返還を支援しましょう。

2016年11月25日 「歴史的な再埋葬を語る集い」参加者一同