アイヌ遺骨返還請求訴訟

ラポロアイヌネイション(旧称・浦幌アイヌ協会)の東京大学に対する遺骨返還請求訴訟

浦幌アイヌ協会の東京大学に対する遺骨返還請求訴訟

浦幌アイヌ協会(差間正樹会長)は2019年11月1日、国立大学法人東京大学(五神真学長)を相手取って、同大学研究者によって地元の墓地などから持ち去られたままになっている先祖の遺骨ならびに副葬品の返還と、損害賠償金の支払いを求める訴訟を、釧路地方裁判所に提起しました。

請求の趣旨

  1. 被告は原告に対し、別紙遺骨目録記載の番号1から番号6の遺骨及び番号6の遺骨の副葬品を返還せよ
  2. 被告は原告に対し、金50万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払い済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え
  3. 訴訟費用は被告の負担とする

との判決並びに2項、3項について仮執行の宣言を求める。

訴状 PDF(267KB)


ラポロアイヌネイション(旧称・浦幌アイヌ協会)は2020年8月7日、東京大学と和解しました。

和解骨子

  1. 東京大学は訴え(釧路地裁令和元年(ワ)第103号事件)に係る遺骨6体及び副葬品をラポロアイヌネイションに返還する
  2. 東京大学は、墓地造成費用、墓地使用料、遺骨等の運搬に要する費用、差間正樹、代理人1名が8月14日に東大に赴く費用すべてを負担する
  3. ラポロアイヌネイションはその余の請求を放棄する


ラポロアイヌネイション(旧称・浦幌アイヌ協会、長根弘喜会長)は2020年8月22日、東京大学との裁判和解に基づき、長らく同大学に持ち去られたままになっていた先祖6人の遺骨の返還を受け、町営墓地に再埋葬しました。

浦幌町内では、19世紀から20世紀にかけて、東京大学(1888年、1965年)、北海道大学(1934年)、札幌医科大学(1974年、1979年)が「研究のため」と称してアイヌ墓地などから埋葬遺体を持ち去りました。その数は、文部科学省の調査結果によれば計71人(ほかに人数不明の遺骨を納めた19箱)にのぼり、長らく各大学に留め置かれたままになっていました。ラポロアイヌネイションは2014年から各大学を相手どって裁判を提起し、6年がかりですべての遺骨の帰還を実現させました。


提訴後の記者会見から

市川守弘代理人

本日、浦幌アイヌ協会を原告、東京大学を被告とする、アイヌ遺骨返還請求訴訟を提起いたしました。細かい内容は訴状をみていただけければと思います。

浦幌アイヌ協会の東京大学に対する遺骨返還請求訴訟

浦幌アイヌ協会は、十勝川の左岸流域下流・河口部に昔からあったコタン=集団の子孫が集まって組織されている協会です。(原告が被告に対して返還を求めているのは)そのなかのひとつ、愛牛コタンのすぐ川向かいから発掘されている、愛牛コタン(構成員)の遺骨であろうと(思われる遺骨です)。(同じ)愛牛コタンの(墓地から発掘され持ち去られた)遺骨は、この「ホシッパ・アンナ」のDVDにもありますけども、北大から(訴訟和解によって2017年以降に)85体を返還させた、それが愛牛コタンの遺骨でした。それから、1961年に(東京大学の)渡辺仁という教授が、十勝太から発掘した遺骨と副葬品です。十勝太も、昔から十勝太コタンていうのがありました。

十勝太の墓地は、訴状にも書いてありますが、縄文後期から擦文時代にかけての遺跡を(コタンの)墓地として、江戸期からずーっと利用していたところで、江戸期に十勝太に埋葬された遺骨が(現代の遺跡発掘調査によって収集されていたが)今年の夏、(収蔵先の浦幌町立)博物館から浦幌アイヌ協会に返還されています。それから、十勝太の墓地近辺の町道拡張工事の時(1979年)に出てきた遺骨を、札医大が持っていたんですけれども、その遺骨も今年の夏、(浦幌アイヌ協会に)返還されました。(→北大開示文書研究会ニューズレター22号

今回の(訴訟対象である)東大が発掘していった遺骨も、浦幌アイヌ協会のメンバーにとっては、身近な、身内の遺骨であろうと思います。

今回の提訴で、これまでのほかの(アイヌ遺骨返還請求)訴訟と違う特徴は、損害賠償をつけていることです。これは、盗掘であることがはっきりしているということと、その結果、ずーっと百年以上にわたって、東大は違法に占有をしているんです。盗掘行為自体は時効だし、除斥期間をとうに過ぎているので、それについての責任は日本の民法上、問えないんですけれども、占有している事実から、常に(原告の)慰霊行為が妨げられている。先祖を敬い、先祖の霊を慰めるという慰霊行為が日々侵害されている、ということで、そういう信教の自由を侵害されているという無形的利益の損害賠償をつけました。それがいままでの遺骨返還訴訟とは違う点だろうと思います。


差間正樹・浦幌アイヌ協会会長

今回、私たちが提訴に至ったのは、いま市川先生が説明した通りなんですけれども、やはり私たちの先祖、浦幌から持っていかれた遺骨は浦幌に返してもらう。これが一番大きな私たちの思いです。私たちの先祖は、私たちの浦幌の土地に帰って、安らかに眠ってもらう。これが私たちの一番大きな目的です。以上です。


2019年11月1日午後4時、釧路弁護士会館で開催。記録・北大開示文書研究会