アイヌ遺骨の研究利用をめぐって

2017年8月17日

北海道公立大学法人 札幌医科大学
理事長・学長 塚本泰司さま

北大開示文書研究会 共同代表   清水裕二
共同代表   殿平善彦
遺骨返還訴訟原告   小川隆吉
コタンの会   神谷広道
平取アイヌ協会員   木村二三夫
痛みのペンリウク著者   土橋芳美
コタンの会   山崎良雄

 

当方からの質問書(5月16日付け)に対する、貴大学理事長・学長塚本泰司様からの回答書(7月7日付け)を受け取りました。北大開示文書研究会および質問書に明記されたメンバーによる貴大学からの回答書の検討に基づいて、以下の要望書を差し上げることといたしました。

1 私共が指摘した研究に関しては、国立科学博物館 篠田謙一氏、山梨大学 安達登氏が研究主体であり、札幌医科大学は関わっていないとの回答です。

しかしながら、使用されたアイヌ人骨115体のうち、少なくとも33体は貴大学が発掘調査し、保管してきた人骨であり、遺骨の管理責任は全面的に貴大学にあると判断されます。他の遺骨は他大学および教育委員会、博物館などからの寄託などと推定されますが、寄託を受けた場合であっても、受寄者は保管義務を負うものであり、有償、無償にかかわらず、自己の財産と同一あるいはそれ以上の管理義務を免れないと判断されます。したがって、今回の研究に関するアイヌ人骨のDNAサンプル採取による人骨の損傷に関して、貴大学の遺骨への管理責任は免れないといわねばなりません。先住民遺骨発掘に関して、発掘時に適法であったかどうかが問われるのではなく、適法、違法にかかわらず、発掘された遺骨のコタンの構成員の了解を得ずに持ち帰ったなら、発掘した関係者及び関係機関の責任は免れないといえます。

2 研究は文化庁が定めた「出土品の取り扱いに関する指針」に則って行われたとの回答ですが、文化庁の指針による出土品にアイヌ人骨が相当すると判断するのは到底承服できないものであります。発掘された遺骨のほとんどが江戸時代の遺骨と記されていますが、その時代はアイヌコタンが最も活発に活動していた時代であり、遺骨の所属が発掘されたコタンにあることは明瞭であります。その時代に埋葬された遺骨を文化財の一部や古人骨と判断することは許されるものではありません。ドイツから返還された遺骨も138年前の発掘であります。 

現在も発掘された遺骨のコタンの構成員あるいはその子孫が同一の土地に在住しています。その人々の存在を無視して遺骨を一方的に損傷した責任は、研究者はもちろん、遺骨を管理する大学、寄託した教育委員会なども到底免れないでしょう。

3 貴大学は「国に置いて地域への返還等に関する返還プロセスに筋道やありかたが検討されていることを踏まえ」対応してゆくとの回答ですが、251体の遺骨を所有あるいは寄託されている大学として、政府の方針を待つまでもなく、積極的に地域への遺骨返還に取り組むべきではないでしょうか。遺骨の帰るべき場所は発掘されたコタンであり、コタンのアイヌ墓地であります。遺骨の返還と再埋葬は、政府の方針を待つまでもなく、司法の判断もあって、各地で進められています。無断で遺骨を持ち去られたアイヌとその子孫の屈辱の思いを顧みながら、当該するコタンの子孫に対して、遺骨の損傷を許したことを謝罪するとともに、貴大学が所有、管理する遺骨への責任を自覚し、率先して遺骨返還に取り組まれますよう、強く要望します。

追記

去る5月16に行われた貴大学と私共の会談の際、会談内容の録音を公開しても良いかと申し出ましたが、その際、百々氏は公開を了解し、貴大学側からも特段の断りがなかったと記憶しております。話し合いの内容の正確を期するため、私共の必要の範囲で録音を公開したいと思います。その旨ご了解下さいますよう申し上げます。